プロ論

プロは、その分野についてよく知っていると同時に、冷徹さや客観性を持ち合わせていなければならない。行為に私的感情を含んではならない。私的感情を含むことは、将来の瓦解を確実なものにする。

料理が好きで好きでしかたない人でも、それだけではプロにはなれない。最高の食材と調理器具を使って、最高においしい料理を作っても、それだけではアマチュアである。プロとして生きていくためには、食材の品質を落としてでも、経済的にやっていけるように料理の単価を下げることが必要だ。こだわりを捨て、妥協しなければならない。妥協は必ずしもマイナス用語ではない。さらに、どんな客が来ても「いらっしゃいませ」と言わなければならない。客に「まずい」と言われて感情的になっているようではプロとは呼べない。

また、別の理解しやすい例を挙げるならば、動物が好きで、生物系の研究職を志すような場合が考えられる。どんなに動物がかわいくても、研究上必要であれば、動物を殺すことに躊躇してはならない。何のためらいもなく殺す、冷徹さが必要だ。この冷徹さを持たずして、プロにはなれない。