学力低下は錯覚である

学力低下は錯覚である

学力低下が叫ばれて久しい。筆者は大学の教員で、教員の間でも「学生レベルが低下している」というのが定説になっているという。しかし、本当に学力は低下しているのだろうか?この問に答えるべく、本著は、定量的データを用いて検証を行っている。

一般的に言われる『学力低下』とは、『集団(日本)全体の学力が低下している』ということであろう。まず、著者は、学力低下は主観的で、過去のデータが不足していることもあり、一概には言い切れないという。

さらに、本当に『集団全体の学力が低下している』を言うには、『縮小のパラドックスによって、集団全体の学力が低下して見える』という要素を考慮しなければならないと主張する。縮小のパラドックスとはつまり、大学が定員を増加している一方、子供の数が減少しており、以前では大学に入れなかった人でも、入学できる状況(全入時代)になっているということである。よって、任意の大学の学生を見た時、学生の質が低下しているのは当然の帰結なのである。

頂点の東京大学を見てみても、1950年代では定員1600人であったが、現在は定員3000人となっている。入学しやくなったのは間違いない。また、私大などでのAO入試や推薦入学の実施も、大学の学生偏差値を低下させる要因になっていると考えられる。

『縮小のパラドックス』を考慮すれば、『学力低下』は言い切れないというのが本著の一貫する主張である。

こうして定量的データを用いて検証してみると、『学力低下』説はつくづくいい加減なものだと感じる。なんとなく『学力低下』だったわけだ。


個人的にも、『学力』は低下していないと思う。時代に応じて変化しているだけ。



『学力』を学ぼうとする力と定義しなおして、マトリックスを作成してみた。